アジサイでアルミニウムを運ぶ仕組みを解明

アジサイでアルミニウムを運ぶ仕組みを解明

沖縄で野菜作りを楽しむ父は、畑の野菜を見て、 よくぼやいています。

「育ちが悪いなぁ~。土のせい かな?」

ご存知ですか?
沖縄の土壌は北部を中心に酸性の土が多いのです。
酸性土壌では土に含まれるAl(アルミニウム)が水に溶けやすくなり植物の生育を阻害してしまいます。
実は、酸性 土壌は地球上の耕地の約40%も占めているのです。 世界中に父と同じ悩みをもつ人がいるはずです。

なんと、その悩みをアジサイが解決してくれるかもしれません!
アジサイは酸性土壌で体の中に多量の アルミニウムをためても元気に生育することが知られています。
これは細胞内の液胞という“ゴミ袋” の中にアルミニウムを運 ぶことで無毒化しているからなのです!

しかし、どのようにアルミニウムを液胞へ運んでいるのかは知られていませんでした。

一般的にアジサイは酸性土壌ではアルミニウムを吸収しガク片(花びらに見える部分)が青色に、アルカリ性土壌ではアルミニウムを吸収できずにガク片が赤色に変化することが知られています。
名古屋大学の吉田教授らはアルミニウムとガク片の関係に注目し、研究を開始しました。

まず、青色のアジサイのガク片からすべての遺伝 子を取り、マイクロアレイという方法を使ってAlを運ぶ遺伝子を探しました。
その遺伝子の働きを遺伝子操 作が簡単な酵母を使って調べた結果、アルミニウムを細胞内に運ぶHmPALT1、そして細胞内に入ったアルミニウムをさらに液胞に運ぶHmVALTという2種類の遺伝子が見つかりました。
次にアルミニウムに弱いシロイヌナズナにこれらの遺伝 子を組み込み、アルミニウムを含む培地で生育状況を観察した結果、シロイヌナズナがアルミニウムに対して強くなることがわかりました。

他のアルミニウムに弱い植物にこの遺伝子を組み込むとどうなるのでしょうか?
土壌が酸性か否かなど気に することなく菜園を楽しむ日も思いのほか近いのかも知れませんね。

私は、今後の研究の成果に期待しつつ、父の趣味を温かい目で見守りたいと思います。