研究の面白さを伝えるのは、先生が研究を楽しむ姿

研究の面白さを伝えるのは、先生が研究を楽しむ姿

都立総合工科高等学校は、7年前に開設され、5年前から授業の中で課題研究を行い、積極的に研究発表を行ってきた。研究成果は、東京理科大学の坊ちゃん科学賞(同大学が主催する高校生による論文コンテストおよび研究論文発表の場)に3年連続で入賞するなど高い評価を受けている。こういった環境はどのようにして築かれたのか。指導を行う藤由嘉昭先生にお話を伺った。

研究テーマの決定は大学方式

課題研究は3年次の必修科目だ。3年生を担当する9名の先生がそれぞれ1~ 2ずつ研究テーマをもち、生徒が一番興味のあるテーマのもとで研究を開始する。「一から生徒個人個人に課題研究のテーマを持たせることは、指導上非常に難しい。」と考え、同高校では大学と同じように、先生自身が研究テーマをもち、生徒が研究テーマを選び、研究をする方式をとっている。

先生の趣味に生徒を巻き込む

電気情報デザイン科で指導にあたる藤由先生の研究テーマは「流星の電波観測」。流星が大気圏に突入した際に生じるプラズマは電波を反射する性質がある。反射された電波を学校の屋上に設置された八木アンテナがキャッチし、パソコン上に24時間自動で記録する。生徒は週一回の授業でパソコンからデータを抽出し、表計算ソフトを用いてどの時間にどのくらい流星が観測できたかデータをまとめ、季節の流星群のデータと比較する。
実はこのテーマ、課題研究のために用意したものではなく、先生の中学時代からの趣味。小学生で天体に興味をもち望遠鏡観測も行ったが、肉眼でも確認できる流星観測に強く心を惹かれ、流星の観測を始めた。教員になり課題研究のテーマとして流星の電波観測を始めたのは自然の流れだった。先生が熱心に研究を行っていると、おのずと生徒も興味をもつ。卒業した後になっても「先生、どんなデータ出た?」と聞きにくる生徒もいるほどだ。

年6回の発表で経験を積む

「彼らは高校を卒業したらもう大人。その前に大人の前で発表をする経験をたくさん積ませたい」と先生は語る。課題研究の成果は、3年生の1月に学校で開催される研究発表会で発表されるが、先生の場合はそれ以外に外部、しかも大人が発表するような研究会などで年間6回も発表させる。「生徒たちはまだ、データをまとめてグラフをつく
ることに精一杯。グラフを眺めてその先にある現象について想像し、何か自分の考えをまとめられるようになればもっといいと思います」と先生は語る。まずは先生が一番熱くなれるテーマがあること、それが課題研究を活性化させ、生徒のやる気を引き出す鍵ではないだろうか。