沖縄から、世界が待ち望む バイオインフォマティシャンの誕生

第一候補
公益財団法人沖縄科学技術振興センター(OSTC) では、
2010年度から3か年計画で「バイオインフォマティクス
(以下BI)人材育成推進事業」を実施してきた。
生命科学、情報科学に跨る広範なBIの分野の先端的な知識や技術を学ぶ講座が
若い学生たちに与えた刺激にフォーカスして事業を振り返るとともに、今後の展望について考える。

BIを活用して目指す未来

沖縄県が自治体として初めて次世代型シーケンサーを導入してから、今年で5年が経つ。
豊富な農林水産物資源に恵まれた亜熱帯の沖縄には、独特な生命遺伝資源や伝統的食素材が
多く存在している
これらの資源の生命情報を読み解き活用する研究開発や、産業振興につなげるための
取り組みが進んでいるのだ。
さらに沖縄科学技術大学院大学の開学や、沖縄健康バイオテクノロジー研究開発センター等の
バイオ関連研究所の開所など高度な研究開発環境が沖縄に整う中、
その担い手として地元の人材の活躍に期待が寄せられる。
同事業では、BI分野の知識や技を基礎から学べる育成プログラムを構築し、
沖縄在住の学生に対して提供してきた。
その他、琉球大学や沖縄工業高等専門学校に構築した育成プログラムを導入し、
継続して学べる環境を整備することにも取り組んできた。
育成プログラムの特徴は、基礎的な知識や技術を多くの実習により修得することはもちろん、
BIを活用したビジネスについても学べることだ。
BI分野で活躍するバイオ系・IT系の企業16社の協力により、実社会に即した講義が実現した。
さらに、それら企業へのインターンシップにより講義で学んだことを企業の現場で実践し、
社会で活躍できる人材への成長を促した。
これら企業からは受講者への採用のオファーも複数あり、育成プログラムの修了生が
社会で活躍できる魅力ある人材として期待以上の成長を遂げたことが実感できた。

広大な荒野に、フラグを立てる

BIの分野は、それぞれだけでも学習範囲の広い生命科学分野と情報科学の融合領域だ。
さらに、進歩も非常に速い。
どこから手を付けて良いかもわからず、学ぶ前から挫折してしまいそうな威圧感さえある。
そこで、同事業ではNPO法人日本バイオインフォマティクス学会(以下、JSBi)が主催する
「バイオインフォマティクス技術者認定試験」の合格を1つの目標にした。
合格率は6割程度で、一朝一夕で合格できるような試験ではない。
しかしながら、広範な範囲がバランス良く設問され、また最新の知識よりも
基礎的な理解が求められる同試験は、修学の目標に最適だ。
同試験の合格レベルを修学の目標に設定し、沖縄県内においても同認定試験を受験できるよう
試験会場も誘致した。
さらに、JSBiの沖縄地域部会を設立した。
同支部会による沖縄県内でのセミナーや講習会の開催も増え、沖縄県外の専門家との交流機会
の創出や最先端の研究成果を学ぶ機会も増えた。

今からでも遅くない。BIに強くなろう。

2010年2月に開催したプレ講座、そして2010年5月開催のフォーラム。
沖縄におけるBI人材育成推進事業は、この2つのイベントによって幕が切って降ろされた。
2つのイベントヘの参加者はのべ201名。
BIという難解な分野かつ、沖縄という土地で開催されたイベントとしては盛況といえるだろう。
期待の高さが伺えた。
2か年の育成プログラムを3年間実施し、基礎的な知識と技術を学ぶスタンダードコースの受講者数は、
のべ101名にのぼる。
インターンシップを含むアドバンストコース・プロフェッショナルコースを全て修了した受講生は13名。
またBI技術者認定試験・沖縄会場からは3年間で31名の合格者を出すに至った。
中でも特筆すべきは、試験合格最年少記録の更新だ。
事業2年目には17歳、さらに事業3年目には16歳の合格者を輩出し、現在16歳での合格は最年少合格記録であり、
平成24年度のスタンダードコースを受講した沖縄高専生である。
BIのような成長著しい分野において、若い時期から感心を持ち一定レベルの知識・技能を身につけた
人材の誕生を後押しできた同事業は、BIの今後の発展に大きく貢献したといえるだろう。
3年で事業が終了を迎えるにあたり、このプログラム自体は琉球大学農学部・工学部の特別講義、
さらには沖縄工業高等専門学校においても独自に開講するための調整が進んでいる。
沖縄の地でさらなるBI人材を育成・輩出することとなる。
それら人材が大学を修了し、沖縄のバイオ産業を支えていくことになるだろう。
BIに興味のある学生諸君、早ければ早いほど良い。
BIという広大な分野に挑み、競争力を高めてはどうだろうか。