ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の精度を向上させることに成功 理化学研究所

ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の精度を向上させることに成功 理化学研究所

GWも明け、これから暑くなる季節ですね。
下敷きをウチワ代わりにバタバタ・・・。
お行儀が悪いなんて怒られている人はいませんか?

ところで、本来の役割と違う使い方をすることで人間の役に立つタンパク質の研究が発表されました。
DNA鑑定という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。
犯罪捜査では有名ですが、ごく微量の生体組織から、DNA配列を調べることで、その持ち主の特徴を調べる技術です。
そのためにはごくわずかな数のDNA分子を、解析が可能な数まで増やす必要があるため、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)という技術が使われています(1993年ノーベル化学賞)。
これは元のDNA分子を複製することをくり返し、数時間で10億倍以上に増やすという技術です。
しかし、ここで問題になるのが複製の正確さです。
くり返しの途中で複製エラーが起こると、誤ったDNAが混ざったまま増えてしまい、正確な配列がわからなくなってしまうのです。

そこで、理化学研究所、放射光システム生物学研究グループの福井健二研究員らは、タンパク質MutSを使って、PCRの精度を向上させることを試みました。
MutSの本来の役割は、細胞分裂中に起こるDNA複製のとき、エラー配列のDNAを探し出してそこに結合し、DNAを修復するタンパク質を呼んでくることです。
この時MutSだけではDNAに結合したままで修復反応は起きません。
そこで、PCRの反応液にMutSを加えれば、複製エラーが生じたときにMutSが結合したままになり、エラーDNAの複製を邪魔できるのではないかと考えました。
実際に調べてみると、PCRによって間違った配列になる量が約3分の1に減少したのです。

直すためのしくみを邪魔するために使うなんて、発想の転換の勝利!といったところでしょうか。
皆さんも、普段使っている道具の意外な使い方を考えてみては?(飯野 均)

今回紹介したのは、僕の出身ラボの研究成果です。
PCRで使われている、DNAを複製するタンパク質やMutSは、温泉が好きな「好熱菌」という細菌からとったものなんですよ。

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