【読み物】身の回りの社会生活を支える理科の力を子ども達に伝えたい (vol.19)
DIC株式会社
光谷幸世さん 総務人事部
大平学さん グラフィック顔料営業部
横山渉さん 新聞インキ技術グループ
DIC株式会社は工場がある東京都板橋区の小学校などで、自社の技術を活かした出前の理科実験教室を行っている。世界のトップシェアを誇る顔料と印刷インキに関する2つの実験を中心とした、理科の勉強と社会生活がつながる学びを提供している。昨年度は5校395人に対して実施した。
身近な生活に隠された「理科の力」を知る
身の回りにあふれている物の「色」はどうやってできているのだろう。1つめの実験では、鉄くぎ、塩酸、過酸化水素等から、ほとんどの工業製品の色の元である「顔料」を合成し、2つめの実験では、水と油の反発を利用した印刷技術「平板印刷」の仕組みを学ぶ。いずれも実験のコアとなる技術は小学校理科の内容を超えているが、6年生で学習する「水溶液の性質」の内容を踏まえ、授業とのつながりを十分意識した内容にしている。実験後は実際の印刷物をルーペで観察し、カラー印刷がいくつかの色の小さなドットがたくさん集まってできていることを知り、それまでの実験内容と生活との関連をしっかり示して授業の締めとしている。
化学に携わるメーカーの使命
普段見慣れた自分達の街に、世界一のシェアを支える技術があることを伝え、理科に興味をもってもらいたい。「これは社会問題化している子どもの理科離れに対しての活動で、化学メーカーとしての責務だと考えています」と事務局を担当する光谷さんは語る。実験教室のメンバーであり技術者でもある横山さんは「理科が好きで今の仕事に就いた。授業を提供することで理科好きの子どもが増えるといい」と話し、大平さんも「子どもはもちろんのこと、先生も実験結果に驚きと興味をもってくださることが多く、嬉しい」と笑みをこぼす。
教育活動は継続してこそ価値がある
「教育活動は継続してこそ価値がある」とメンバーは口をそろえる。継続のためには授業の品質維持は欠かせない。スタッフへの指導役でもある光谷さんは、児童への話し方や接し方は普段の仕事では学べない特殊なスキルが必要であると考え、実験教室実施前には必ず実施メンバーに研修を行っている。「私達にとっての実験教室は何回かのうちの1回ですが、子どもにとってはこれ1回きりの授業。失敗は許されません」。3年間でこの活動に参加した社員の数は20名を越える。毎年メンバーの多くを新しい人に入れ替え、毎年研修を行う。より良い授業のために、あらゆる部署の協力、人材育成の仕組みが根付いているDIC株式会社。今後も事業所のある地域を中心に、継続した活動を行っていくことを誓っている。