海に浮かぶ、エネルギーアイランドをつくり出せ! ~新しいモノづくりに挑戦する大人たち~
穏やかな日も常に波や風があり,台風が来れば高さ10mを超える波がせまる海。「そこに浮かぶ風力発電所をつくろう」。それに挑戦しているのが,新日鉄住金エンジニアリングの堺浩二さんをはじめとするエンジニアたちです。今,福島や九州,北海道など日本の各地で挑戦が始まっています。
海に浮かぶ風力発電所
2011年の震災の後,原子力発電所が止まり,日本では今,使う電気の90%が火力発電でつくられています。日本には,火力発電に必要な燃料はほとんどありません。そこで考えられているのが,日本にも豊富にある水や太陽光,風を利用した発電をすること。しかし,島国で山が多く,大きな発電所をつくる場所はあまりありません。そこで注目されているのが,世界で6番目に広い水域をもつ日本の「海」です。
じつは,海は風の方向や強さが陸よりも一定で,風力発電に適した場所です。水深が50m以下の海ならば海底に柱を立てて設置することができます。ところが,日本の海は,陸から少し離れるとすぐに深くなってしまいます。その解決策として考えられているのが,海にぷかぷかと浮かべる「浮体式洋上風力発電」です。
波や風を計算して,「初めて」に挑む
みなさんが海に浮かぶ発電所の開発者だとしたら何を考えるでしょう。倒れずに浮かぶかたちを考えるだけでは,発電所をつくることはできません。電気を陸に届けるための海底ケーブルや変電所も必要です。さらに,海の波や風のデータから最適な設置場所を探したり,巨大な発電機を沖まで運び,効率よく組み立てる方法を考えたりすることも重要な設計です。事前に練習できないため,海での作業手順や組み立てた後の状態は,すべて計算によって設計します。たとえば,300〜400tある風力発電のプロペラ部分を100mの高さに持ち上げて設置するために,浮力や持ち上げたときの重心などを計算して必要な船の大きさを割り出します。さらに,波や風が加わるとどうなるでしょうか。風が吹くと波が立ちますが,太平洋側の海はとても広いため,遠くで生まれた波が日本に届くまでに大きなうねりになることがあります。さまざまな波にさらされることを想定しなくてはならないのです。
「海に発電機を浮かべた経験をもつ人は世界にほとんどいません。初めての挑戦には,これまでのモノづくりの経験と海から学んだ知識をうまく役立てる力が大事です」と堺さんは話します。
自然の中に溶け込む方法を考える
「エンジニアは,工学や生物学などさまざまな知識を総動員して,人々の暮らしに必要なものを自然の中に溶け込ませる方法を導き出す挑戦者です」と堺さんは言います。
10年後,海の風力発電所はどうなっているでしょう。技術が進歩し,1か所にとどまらず自由に動き回って風を探しに行く風力発電所ができたりするかもしれません。そのときは,海と共存するために,あらゆる場所の波や風の状態や生態系を知らなくてはいけませんね。
さらに,時間が経てば自然の中になじみ,自然の一部として海の中に存在しているでしょう。何か生きものの巣になっているかもしれません。新しいものに入れえるときには,いま導入しようとしている発電機をどのようにして撤去すればいいのか,それもまた考えなくてはならないのです。海に浮かぶ発電所の実現に向けて,エンジニアの挑戦はまだまだ続きます。 (文・楠 晴奈)
Presented by 日鉄エンジニアリング株式会社
今夏Mission-E 始動!
エネルギーアイランドプロジェクト〜未来の洋上風力発電所を設計せよ!
企業のエンジニアとともに,風や波など過酷な環境に耐える新しい洋上風力発電所をつくるため,「エネルギーアイランド」の設計に挑戦するプログラムです。
- POINT 1 安定かつ強固な構造物の設計
- POINT 2 コストや地球環境との共生
★企業のエンジニアと洋上風力の開発を!挑戦者募集します★
半年間の課題研究プログラムです。2015年度は,参加校,新日鉄住金エンジニアリングのエンジニア,リバネスのチームに分かれ,1/250スケールのエネルギーアイランドの模型の設計・試作に挑戦します。3月に実施するコンテストでアイデアを競います。参加してみたい人は,3人以上のチームをつくり,先生を通じて申し込みをしてください。
問い合わせ:株式会社リバネス(担当:磯貝 里子) TEL 03-5227-4198 MAIL [email protected]