沖縄に新たな飛行機産業を興す 株式会社沖縄海上飛行機開発

沖縄に新たな飛行機産業を興す 株式会社沖縄海上飛行機開発

海に囲まれた島嶼(とうしょ)地域、沖縄県。年間600万人を超える観光客が訪れる青い海が美しいリゾート地だ。
一方、島嶼地域ならではの課題として、特に事故や災害などの有事における離島間の緊急搬送や物資運搬などに不安を抱えている。
海上飛行機は、このような沖縄の課題解決、さらには新たな価値の創造をもたらす大きな可能性を秘めている。

高耐波性水上飛行機用フロートの開発

 ここでいう海上飛行機とは、いわゆる水上飛行機ではない。フロートが胴体固定されている一般的な水上飛行機は、水面が穏やかな湖沼などでの利用が多く、波のある海での運用は限定的だ。
海においては静水時でさえも、水面をピョンピョンはねるイルカ飛び(ポーポイジング現象)を起こし、離水着水の際には転覆や機体破損など重大な事故につながる危険性が高いなど大きな課題がある。
これに対して、独自の非線形支持機構のフロートシステム(特許申請中)は、波の影響を低減し、安定性、凌波性を両立することで海上での運用を可能にする。
波浪中離水挙動の数値シミュレーションでは、機首が上下に振れる機体ピッチングを大幅に減少することが確認されている。東京大学や日本大学における水上軽飛行機「そよかぜⅡ型機」による実証試験では世界に先駆けて機体長の5分の1の波高までの耐波性を実証している。

技術だけでは解決できない課題

 航空法などの法的制約も大きな課題のひとつだ。
そこで着目したのが、前述の「そよかぜⅡ型機」のような軽飛行機(ULP:ウルトラライトプレーン)の分野である。ULPも航空法上で規制されるが、航空機の耐空証明および操縦者の技能証明など比較的簡単に許可が得られるという特徴がある。
現状は、飛び立った飛行場以外への着陸が許可されない、搭乗者は操縦者に限られるなど、実用目的には使用できない。
しかし、沖縄県との調整により、離島間や災害時の交通手段にも活用できるように、沖縄に限ったULP特区の設立など実用化に向けた活動も並行して行っている。

合言葉は「沖縄に新たな飛行機産業を興す」

 沖縄海上飛行機開発は、「海上」での運用にこだわる。
それは、冒頭で述べたような課題の解決や新たな価値の創造の可能性があるにも関わらず、未だ実現されていない領域だからだ。
独自開発のフロートシステムは、海上運用を実現する要素技術のひとつに過ぎない。日本初となるホバーウィング(地面効果翼機)の開発にも着手した。
ホバーウィングは、短い主翼を持ち、地面効果により得られる大きな揚力で2〜5m程浮上して時速80kmで滑空することができる。
海上運用においては、波高による揚力の変化、それに伴う推進性能、運動性能、安定性等の確保など技術的な課題があるのはULPと同様だ。
しかし、航空機のような外見のホバーウィングではあるが、国際的には船舶と定義されるために製造や運用において、航空機のそれと比較して格段に参入障壁が低く、技術課題の解決によりその運用の実現性は高い。

 海に囲まれた沖縄にこそ、このような要素技術を集結させた沖縄航空クラスタの実現が望まれる。
沖縄県出身者やゆかりのあるメンバーが集まった沖縄海上飛行機開発。

「沖縄に新たな飛行機産業を興す」の合言葉に込められた想いは熱い。(岡崎 敬)