“迅速、簡便、正確”の3拍子が揃った鮮度チェッカー
皆さんは魚や肉を購入するとき何に着目して選択を行うだろうか。価格や生産地に加えて、鮮度と答える方も多いはずだ。このように鮮度は、食品を評価する重要な要因でありながら、市場や加工場、あるいは小売店などの現場で活用できる簡便かつ正確な評価法が確立されていなかった。そのような中で、東北大学大学院農学研究科の佐藤實教授のグループは“迅速、簡便、正確”の3 拍子が揃った鮮度チェッカーを開発した。
どれも一長一短であった鮮度の評価指標
死後、時間経過によって変化する筋肉硬直の強さをみる手法や、生菌数の測定など、鮮度の評価法にはさまざまなものがある。しかしながら、測定結果が人の感覚と
十分に一致していなかったり、その場で迅速に測定ができなかったりと、どの方法にも一長一短があった。その中で人の感覚による評価に近く迅速性にも優れているの
が、K 値という指標である。牛、豚、魚類などの動物では、筋肉組織でのATP 再生回路の停止に伴い、死後にATP の分解が進む。K 値はATP やAMP など分解過程初期に存在する物質と、後期に蓄積されていくイノシンやヒポキサンチンとの割合を式によって数値化したものであるが、液体クロマトグラフィーなどの分析装置が必要なため、設置にスペースが必要なこと、導入コストがかかること、維持管理に専門的な知識をもった人材が必要なことなどの課題があった。
わずか10 分での測定を可能にした「鮮度チェッカー」
そこで、佐藤教授の研究グループでは、K 値の算出に必要な物質を、ろ紙上で電気泳動を行うことで迅速かつ簡便に分離できる鮮度チェッカーの開発に成功した。測定にあたっては、肉や魚の調整液を一滴、ろ紙にスポットして電気泳動をかける。その後、紫外線をあてて浮かび上がった泳動後のATP やヒポキサンチン等のスポットを自動で読み取り、K 値を自動で測定してくれるのだ。この鮮度チェッカーでは一度に5 検体の食品サンプルをわずか10 分で測定することができる。
佐藤教授らの研究グループは東北地方の漁協や漁連の協力のもと生産者や加工業者に対してセミナーを行い漁業の現場での普及に努めているが、もちろん用途としては漁業に限らず畜産や小売りの現場など様々なものが考えられる。詳細な機能や用途、使用価格等については、以下の連絡先まで問合せてほしい。
問合せ先
株式会社QS-SOLUTION
http://www.qs-solution.jp/form.html
取材協力:東北大学大学院農学研究科 山口敏康 准教授