世界を救う藻類を見つけ出せ! 岩手県立高田高等学校

世界を救う藻類を見つけ出せ! 岩手県立高田高等学校

岩手県の沿岸部に位置する陸前高田市は、東日本大震災で発生した津波により甚大な被害を受けました。
しかし、津波の襲来を逆手に取り、世界のエネルギー問題に挑む壮大な研究が高校生の手によって始まりました。

tohoku-sourui大きな期待を集める、小さなオイル生産藻 今回の研究の主役は、ミドリムシやミカヅキモなどに代表される「藻類」たち。
最近これらの藻類の中に、光合成などの過程で得た糖分を高い割合で炭化水素の油として蓄える種がいることがわかってきました。
これらの藻類がつくり出す油には、大規模な施設の運用に使われる重油や、飛行機を動かすジェット燃料として使用できるような実用性が高いものもあります。
藻類は他の植物と違って、小さい面積で大量に培養できること、また短期間のうちに爆発的に増えることができるので、たくさんの油を生産できると期待されています。
最近では、「榎本藻」や「オーランチオキトリウム」などの新種が、増殖速度がとても速い藻類としてテレビや新聞でも大きく取り上げられました。
藻類がつくる油は、枯渇が心配されている化石燃料の代わりとなる「救世主」として期待されているのです。

たくさんの油をつくり出すのは誰だ? 数十万種類にものぼると推定されている藻類ですが、そのうち名前がつけられている種は4万種にすぎず、未知の藻類がたくさん眠っています。
津波の被害を受けた陸前高田の地には、普段なかなか調査することができない、遠洋から運ばれてきた新種の藻類が存在するのではないかと考えられているのです。
そこで、高田高等学校では有志のメンバーが集まり、油をたくさんつくる藻類を探す研究プロジェクトが立ち上がりました。
約20名の参加メンバーは日々の勉強や部活の合間をぬって、海岸部や田んぼ、さらには家の近くのわき水など、さまざまなところから土壌や水のサンプルを採取しました。
そして、入手したサンプルは、空気中にただようカビなどの雑菌が入り込まないよう細心の注意を払いながら培養されています。
「藻類が増えることで透明な培養液が緑色に変わっていく様子を見ることが楽しい」と研究メンバーの菅野夏奈惠さんは話します。
今後は、培養した藻類からDNAを取り出してその種類を特定するとともに、どれくらい油をつくる能力があるのか、またどんな油をつくるのかを実験で調べていく予定です。

陸前高田発の大発見が生まれる!?

takata東日本大震災の残した傷跡は深く、同校も隣町の大船渡市にある仮校舎へと移転を余儀なくされました。
「このような状況の中で、何とか生徒が元気を取り戻し、理系進学や研究の道を志してほしい」と研究プロジェクトを立ち上げた伊東孝浩先生は語ります。
そして、その想いに応えるように「実際にやってみて、研究の楽しさや重要性を改めて知ることができました。新種の藻類を見つけたい!」と研究メンバーの志田佳奈さんは語ってくれました。
近い将来、陸前高田の地から世界を救う研究成果、そして未来を担う研究者が誕生する日がやってくるのかもしれません。

東北バイオ教育プロジェクト,活動中!

Produced by 協和発酵キリン株式会社

協和発酵キリン株式会社では,岩手,宮城,福島の 3 県の高校において,今後のバイオ産業を 担う次世代を育成する「東北バイオ教育プロジェクト」を行っています。高校生が自ら研究テー マを考え,実験計画を立て,結果から考察を導き出す,本格的な研究活動を実践したい学校を支 援します。 2013 年度の参加校募集中! → http://p.tl/WGmp