SBN185_人工生物発光酵素 ALucを開発

SBN185_人工生物発光酵素 ALucを開発

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ヒトにバッタの遺伝子を組み込んで、バッタの跳躍力を持つヒーローが誕生!…なんてことは今のバイオテクノロジーでも無理ですが、ヒトの「知恵」の力で自然に存在する「光る酵素」の能力を、なんと100倍にパワーアップさせたという研究が発表されました。

生物が光る仕組みには、外からの光を吸収して別の波長の光を出す「蛍光」と、化学反応のエネルギーを光に変える「化学発光」の二種類があります

両方ともバイオテクノロジーの研究に大きく役に立っています。オワンクラゲの「蛍光」タンパク質(下村博士が発見。その功績で2008年にノーベル賞受賞)は、調べたいタンパク質につないで、そのタンパク質が細胞の中のどこにあるのか調べることなどに使われています。「化学発光」の代表的なものは「ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応」で知られるホタルの光で、食品に微生物が混入していないか調べるためなどに利用されています。しかし、「蛍光」は測定に使う機器に高価で大がかりなものが必要である一方で、「化学発光」は明るさが弱く、光が持続しない、という問題がありました。

そこで、産業技術総合研究所では、プランクトンであるケンミジンコ類の持っている「化学発光」酵素が、分子量が小さいにも関わらず強く光ることに着目し、この改良を試みました。複数種類のケンミジンコ類がそれぞれ持っている「化学発光」酵素のアミノ酸配列を並べて比較し、発光の効率がもっとも高くなる、「人工のアミノ酸配列」を予想して、実際に作ってみました。こうして生み出された「人工発光酵素(Artificial luciferase; ALuc」は、自然のものより100倍も明るく、しかも光る時間が7も長くなったのです。

このALucは今後、研究現場はもちろん、病気や健康状態の診断、水や食品中の化学物質の診断などの多くの分野で活躍していくことと考えられます。

自然にある生物の能力をヒトが劇的に改良できるなんて、まるでSF映画のような話ですね。同じ方法を使って、発光酵素だけではなく、様々な酵素の能力をパワーアップできそうです!

参考:

http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2013/pr20131126/pr20131126.html

記者コメント:

参考サイトの動画をぜひ見てみてください!自然の酵素と人工の酵素の光り方の違いが一目瞭然で、とてもきれいです。また、発光酵素の光る仕組みのCGはとても美しいです。(飯野均)

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